大判例

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八王子簡易裁判所 事件番号不詳 判決

主文

被告人を罰金壱万円に処する。

右罰金を完納できないときは、金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、西武鉄道株式会社池袋線保谷駅(東京都北多摩郡保谷町下保谷二九三番地所在)に勤務し、駅務手として、旅客の誘導、案内、整理、乗降の危険防止などの業務に従事していたものであるところ、昭和三六年五月一一日午前零時三三分保谷駅に到着した四両編成の第四六九電車を入庫させるため乗客の降車、整理に従事中、四両目車両中央座席に矢島喜一(当時二九年)が酩酊熟睡していたので、これを起こし中央ドアよりホームに下車させたのであるが、かような場合駅務手としては同人が酩酊のうえ熟睡より目ざめたばかりで、歩行蹌跟としていた状態であり、ホームから線路敷地上に転落したり、或は電車発進の際これに接触して転倒する等の危険も予想されることであるから、同人を待合室など安全な場所に誘導し、また客扱い終了異状なしの合図をするにあたつては、自己の担当する車両とホームの近接する部分に注視する等危険の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにかかわらずこれを怠り、漫然同人をホームに降車させたのみで、他の乗客の降車整理に移つたため同人がホームから三両目と四両目の間隙から線路敷地上に転落し、ホームに這いあがろうとして、上半身をホームに乗り出していたことに気付かず駅務係恵沢一夫を介し車掌篠武弘に対し客扱い終了、異状なしの合図をなし、同人をして戸閉操作をなさしめたうえ、運転士鈴木崇弘をして同電車を発進させたため、右恵沢一夫、篠武弘において前記矢島喜一が三両目と四両目の間よりホームに這いあがろうとしているのを発見し、急停車の合図を送つたが及ばず同人を四両目右側下部とホームの間で圧轢死させたものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

法律に照すと、判示被告人の所為は刑法第二一一条前段に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、罰金等臨時措置法第二条第三条を適用し、被告人を罰金壱万円に処し、右罰金を完納できないときは、刑法第一八条に依り金五百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文に従い全部被告人に負担を命ずる。よつて、主文のとおり判決する。

(昭和三八年一二月一三日 八王子簡易裁判所)

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